亀人たちは、亀を殺すことで差別されたりなどしていなかったのでしょうか。 / 亀を運ぶのは亀人の仕事だったようですが、他の人が運ぶと亀が穢れるなどの発想はなかったのでしょうか。 / 亀人が亀を運ぶことについて、征旅とともに喪についても同様としていますが、亀が異界へ人を運ぶという考え方と関連しているのでしょうか。

講義でも触れたように、亀人は、恐らくはもともと亀の捕獲や生育に関する特殊知識・技能を持ち、貞人たちの配下にあって活動していた集団だったのではないかと創造されます。中国中原の文化は狩猟採集から牧畜へ発展してきた文化ですから、仏教が伝来していないこの時期は、殺生をする業種に対し差別的な認識は生じていなかったと思われます(祖廟に犠牲獣を供える世界ですので)。しかし、元来は身分の高い人々ではなかったと思われますので、他の士集団からは特殊視されていたかも知れませんね。亀人だけしか亀を扱えなかったのは、亀の神聖性ゆえでしょう。ちなみに喪に関する記事は、何も亀人に関する項目だけに出ているわけではありませんので、亀が他界へ人を運ぶということとの繋がりは薄いと思います。『儀礼』士葬礼/卜葬日には、亀卜を行って葬儀の日時を決める方法が詳述されていますが、そのように喪葬に際して亀を用いることがあったためでしょう。