古墳時代の祭祀には庶民の主体的な関わりがないように思うのですが、民衆が中心になって行う祭祀などは存在したのでしょうか。

古墳時代にも、村落での祭祀の形跡はあります。やはり、古墳や湧水点祭祀に用いられた滑石製模造品を用いたものですね。しかしそれらの担い手は純粋な「庶民」ではなく、中・小規模の村落首長だったものと考えられます。しかし、8世紀の文献のなかには、まさに庶民が旅の途中で様々な祈祷を行ったり、共同体ではなく個人レベルの祭祀を行っている記述もみうけられます。大きな痕跡は残していませんが、それらは古墳時代にも行われたとみていいでしょう。旅の無事を祈って途上の樹木や岩に供物を捧げたり、遙かにみえる名山やこれから渡ろうとする川などへ無事を願うという行為は、古墳時代より存在した可能性があるでしょう。