そもそも古代の神道は、「神道」と呼べる体系的なものではなかったのではないでしょうか。神道の起源はどこにあるのでしょうか。

神道の起源そのものについては、講義でお話しした自然祭祀にあるとみていいでしょう。その後、王権がとくに信奉した神社を中心に、祭祀の制度化、起源神話の詳細化が進んでゆきます。ときにそれは、中臣や忌部といった祭祀氏族、それぞれの神社の奉祀氏族による歴史叙述、氏族伝承の再編成(氏文など)とリンクしてゆき、体系化されてゆきます。日本における「神道」という語句の初見は、『日本書紀孝徳天皇即位前紀にあって、孝徳が仏教を信奉し「神道」を軽んじるという文脈のなかで出てきます。大神社のなかには早期に神仏習合を進め仏教の論理を採り入れるものもあり、また仏教の影響を拒絶しつつその論理に対抗しようとするものもあって、やはり仏教を意識しつつその「教義」が整備されてゆくことになります。そうした意味では、やはり「神道」自体の醸成には仏教が不可欠であったといえるでしょう。