現在でも、家を建てる際に神事が行われているが、これも神社の自然崇拝と同じ二面性を持っているのだろうか。

そうですね。来週少し話をしようと思っていますが、現在の建築に関する神事は、古代に体系化された〈木鎮め〉という一連の祭儀の形式化したものです。現在でも、神社の式年遷宮などではこの形式を踏襲しているところもありますが、まず山の入り口において山神へ中へ入る許可を求める山口神祭を行い、続いて伐採する樹木の前で、その許可を山神や樹霊に求める木本祭儀を行う。その後樹木を伐り出して山から出し、柱に精製して、柱立てや棟上げなどの建築祭儀を繰り返し建物として完成させる。この全過程を経て、樹霊が人間の生活の素材となることを納得し、建築物の守護神となってくれるのです。まさに、自然の神聖視と開発とが併存する二面性を持っているといえるでしょう。