亀は、神のような存在として捉えられていたのでしょうか。

神という概念が、キリスト教の神と同じようなものであるとすると、それには当てはまりません。アジアの神霊は精霊的なもので、ときには呪術的な力を駆使する人間に付き従い、奉仕をするようなこともあります。司馬遷の『史記』に載る「亀策列伝」には、亀卜を行うときの具体的な手順が書かれていますが、卜官は亀甲の精霊に「玉霊夫子」と呼びかけ、ときに誉めそやし、ときに脅迫しながら未来への予言を引き出します。人間と精霊とは、そのような政治的駆け引きも行う緊張関係にあったと考えられます。