現在の歴史学は、19世紀にランケによって実証主義が提唱され、そののち言語論的転回によって「歴史は物語り」といわれるようになったと聞いています。現在でも歴史学は、実証主義的で個別的なのでしょうか?

世界的な枠組みでみれば、いわゆるポストモダンの歴史研究も各所で行われています。しかし日本の場合は、ほとんどの歴史学者が上記の議論に参加すらしませんでした(私は参加して論文を書いた一人です。『史学雑誌』回顧と展望で批判されましたが)。言語論的転回とは何か、と聞かれて、きちんと答えられる歴史学者の方が少ないと思います。日本では、当の批判を受けた歴史学者は当初からほとんど舞台に上がらす、文学や哲学の世界でのみ議論が展開されてきたかっこうです。よって、実証主義自体はほとんど打撃を受けず、現在でもその体制を維持しています。