人間が動植物とトランス・ポジションする神話について、植物への転換はどのように行われたのでしょう。また、植物の場合の「毛皮」は何に当たるのでしょうか?

実は、樹木については、人間が樹木から生まれるとか、人間が人の姿となって現れた樹霊と結婚するとの神話・伝承は多く伝わっているものの、人間自身が樹木に変身するという形式はほとんどみられないのです。日本神話のオホゲツヒメのように、屍体から五穀などが化生するといった事例(インドネシアのある神話に因んで、〈ハイヌヴェレ神話〉と呼ばれます)や、禁忌を破ったために子供を宿したまま樹木に変わってしまう(子供はその洞から生まれる)といった事例は時折目にするのですが。これは恐らく、神話的感覚においても、植物/動物のあり方が区別されていたということなのでしょうね。