牧畜技術が起源となって王権の支配機構が構築されてゆくと考えられるとのことですが、これはオリエントだけでなく、中国など他の地域ではどうなのでしょうか。

確かに、中国王朝も牧畜を基底に発展した支配機構を持っていますね。古代国家論や王権論は、歴史学の分野においては、未だその起源に属する議論が活性化されていません。かつてマルクス主義歴史学が全盛であった頃は、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』に基づく議論が展開していましたが、人類学や環境史の考え方を融合させた研究は未発達です。日本の律令国家においては、中国的制度を輸入し機能させるうえでさまざまな方向修正がなされましたが、それを、牧畜に根ざした支配機構を狩猟採集・稲作農耕文化のうえに定着させようとしたためと理解すれば、また新しい事実が発見できるかもしれません。