人間が罪業によって来世いかなるものに生まれ変わるのかは、古代の人々も真剣に関心を示した事柄であったようです。中国の六朝時代には、この問題について直接的に記した『成実論』が翻訳され、当該部分のみに特化した疑偽経典も作成されるに至りました。うち、債務を背負ったまま死んだ者は牛馬に生まれ変わり、労働によって負債を返し続けるとの記述は広く受け入れられ、関連の説話も多数作成されました。「杜子春」の物語もその一形態です。『霊異記』のネコは仏典にこそ記述はありませんが、負債云々というより、他界の象徴として登場しているのでしょう。