キリスト教では、祈ることも結婚式もお葬式もするのに、どうして日本では、お祈り・結婚式は神社で、お葬式は寺で…といったように分業制なのでしょうか?

実は、仏教も神道も、現在、あらゆる通過儀礼・諸行事を担う機能は持っています。寺院でも初詣や種々の祈願は行われていますし、結婚式も開かれます。最近では、東貴博安めぐみの仏式結婚式が浅草の浅草寺で行われましたし、私も築地本願寺で仏式の結婚式を挙げました。神道も「神葬祭」という葬儀を行います。しかし質問のとおり、このような状態が、以前からずっと続いてきたわけではありません。例えば結婚式は、戦前においては、婚姻を結ぶ家どうしがいわば無宗教の儀式として行う、「家結婚」が主流でした。仏教は、教義において愛欲を否定していましたので、結婚式を主宰しなかったのは当然です。現在の形式は、主にキリスト教の結婚式に基づいて作成されたものに過ぎません。しかし葬儀や死者供養については、もちろん古代から関与してきました。現代、仏教が主に死者関係の儀式・儀礼を担い、結婚式などを受け持つことが少ないのは、そうした歴史的経緯によるものなのです。神道についても、ほぼ同じことがいえますね。