『魏書』では倭国が好意的に扱われていたそうですが、推古朝の外交を扱った『隋書』では「蛮夷の書、無礼」などとされています。そんなにコロコロ評価の変わる中国の史書を、どの程度まで信用してよいのでしょうか。 / なぜ、『魏書』は倭についてそれほど記述を割いているのでしょう。呉のような海洋国家の方が、よほど倭と関わりがあったと思うのですが。

中国の歴代の正史は、時代ごとの王朝の意図を反映しますので、そのつどの政治的局面によって書き方が変わるのは当たり前です。それを充分に考慮して、批判的な読解を行わねばなりません。また、誤解のないように書いておきますが、いくら『魏書』が倭を好意的に扱っているといっても、その記述が収められているのは「東夷伝」であり、夷狄と捉えているのは前提なのです。また、陳寿がなぜ倭を好意的に扱ったかですが、それは司馬懿の偉業を顕彰するためにほかなりません。彼が公孫淵を滅ぼしたことで倭との交通が開けた、その倭は魏にとって優れた国でなければならなかったわけです。