『古事記』は、書かれている神話の新しさから偽書説も唱えられていますが、先生はどのように考えていますか。 / 『古事記』『日本書紀』は、そもそも史料として利用できるのでしょうか。古代日本を考えるためには、何を史料とすればよいのでしょうか。 

現在は、『古事記』の序文を疑う見解はありますが、全体を偽書とみなす説は少なくなってきました。音韻や文章の詳細な分析も進み、8世紀前半のものとみて間違いないという評価が定着しています。神話については、これといって「新しい」という感覚はありません。『日本書紀』と比較すれば、土着の色彩が濃厚に現れている印象です。さて、皆さんのなかには、『古事記』『日本書紀』は事実を反映していないので役に立たない、と思っている方も多いかも知れませんが、過去に記された文献のなかで役に立たないものはありません。そこから何を読み取ろうとするか、何を明らかにしようとするのかという視点、漢籍や朝鮮の諸史料、金石文、考古資料等々との比較検討作業を通じて、上記二書からも豊かな古代史像を描くことができます。授業で紹介したような参考文献を読んで、ぜひその醍醐味を味わってみてください。