フレーザーの挙げた王殺しの事例に、ヨーロッパのものはなかったのでしょうか。

もちろん、ヨーロッパの事例も扱われています。古代ギリシア、ローマの王たちから、ゲルマンの王たち、中世のアーサー王伝説などに至るまで、王殺しのモチーフが追究されてゆきます。しかし、ヨーロッパ世界において最も影響力のあった王殺しは、なんといってもイエスの処刑でしょう。人間の原罪を引き受けて救済の契約を更新するという位置づけは、明らかに世界の不吉を一手に背負って殺される王そのものです。