「人間が作り出した自然」というものについて、否定的な考えを持つ必要があるのか? / なぜ私たちは、「人の手が入っていない」自然を大事と考えているのでしょう?なぜ人工は天然に劣ると考えられているのか、何がそうさせているのか、疑問に思いました。 / 現代において自然を破壊することは悪いこととされていますが、昔の人々は生きるために自然を利用し開発を進めていました。これを悪いこととは思いませんが、こうした認識の違いはどこからくるのでしょう?

近代という時代は、文明の発展のために自然を素材として用いてよい、自然から解放されそれを制圧することこそ人間の宿命である、と考えられてきました。この単元の冒頭でもお話ししたとおり、しかしそのことが地球環境のバランスを崩し、幾多の環境問題を生み出して、人間自身の首さえ締め上げるようになっていったのです。手つかずの自然を重視する視線は、文明の拡大に対する反省と相俟って生まれてきたものといえるでしょう。歴史のなかにある「人為的自然」は、人間が地球環境のことを考慮して計画的に構築したものではありません。人間自身が生活しやすいように、そのことを第一義に考えて、長い時間をかけて作ってきたものです。そのため、気候の悪化や政治不安によりバランスが崩れると、すぐに過度な開発へと暴走してしまう傾向を持っています。その結果として災害が起こり、村が丸ごと消えてしまったりするわけです。「人為的自然」の内包する危険性には、常に注意しておかねばならないでしょう。