日本の昔話は室町時代頃から存在したと思うのですが、江戸時代を通じて現代に至るまでの間に変化はしてきたのでしょうか。

例えば、授業で扱った『桃太郎』など、江戸時代を通じても内容に変化が生じます。よく知られているのは、川上から流れてきた桃から桃太郎が生まれてくるパターンと、桃を食べて若さを取り戻した爺さん・婆さんが子供を産む、というパターンの2つが確認されることですね。ともに、下敷きとされたのは中国の桃源郷(桃花源)のイメージで、川の源流に不老不死の仙人たちが暮らすユートピアがあるという考え方です。そのシンボルが桃で、これこそ不老不死の仙薬なのです。前パターンと関連していうと、桃から生まれた桃太郎は彼自身神仙であり、後ろの御パターンに関連していうと、仙薬を得て若返った爺さん・婆さんの子ということで、彼には不老不死の力が漲っているということになります。すなわち、時代的な変化だけではなく、昔話には、同一の話型であっても、伝承地域による内容の多様性が広くあったということです。