文化を形成するうえで、自然を殺すことがあるのはやむをえません。しかし世界に、本当の意味で「共生」している人間はいるのでしょうか。いわゆる民族社会の人たちは、自然と共生しているといえるのでしょうか。
本当の意味での共生とは何でしょうか。いずれにしても、「共生」の定義が問題になります。人間が、自然環境を自分の生活に適した状態へ作り替える(文化構築)生き物であり、それが生存戦略であるとすれば、相互不可侵の状態で共栄を目指すことはそもそも不可能です。人間は、自然環境に寄生しなければ生きてゆけません。ならば、その人間のありようが自然の回復力で補える程度に抑えられていること、それが共生の状態でしょうか。理想的にはそうかもしれませんし、侵食した部分を別の方法で補完することも可能かも分かりません。それに近い状態で暮らしている人々も、地球上には存在するでしょう。しかし、ここまで人間の人口が増えてしまった現在となっては、全体的にその理想を実現することは不可能です。安易な方法は人口を減らすことでしょうが、そうした生命への管理を強めることは、人間が人間ではなくなることを意味するでしょうね。