日本には樹木を信仰の対象として祀るという文化があります。これは、昔からの豊かな自然を背景に成立したと思い込んでいましたが、もし樹木が少なかったとすると、どこから派生してきたものなのでしょう。

日本列島の森林の歴史にも時代による変化があり、縄文から現代に至るまでずっと草地ばかりだったわけではありません。それなりに森林が豊かな時期もあり、その点で樹木信仰も醸成されたのです。しかし神木等々の信仰に限っていうと、実は、周囲にほとんど山林が存在せず、一部にのみ繁茂していた方が、そうした地域が神聖化されやすいのです。自然の生命力が、その場所のみに特徴的に現れるからです。鎮守の森も、ある意味では開発の担保(ここさえ残しておけば、あとは開発してもよいもの)として、周囲の森林の減少と反比例的に神聖化が進んでいったものと考えられます。