熊に対して、汎世界的に共通する認識、概念が存在することに驚きました。現代のようにインターネットもない情況なのに、どのようにして共有がなされたのでしょうか。

以前に別の質問に対してした回答ですが、隔絶した地域に酷似した文化形式が残っている場合、大別して二つの要因が考えられます。ひとつは伝播論で、ある地域から人やモノ、情報の移動によって伝播してきたというもの。もうひとつは環境準拠論で、類似の自然環境下では人間のそれへの適応も類似するので、その総体的結果ともいえる文化形式も類似してくるというものです。実際には、このふたつが絡み合いながら、地球上のさまざまな文化形式を形づくっていると思われます。熊の場合にも、授業でお話ししたように、狩猟採集時代の人の移動に理由を求める見解があります。しかし、ほぼ同じ生態をもって生活している熊を、やはり同じような形式で狩猟・捕食している人間との間には、どうしても共通の祭儀、信仰、物語などが生まれてくることになるのでしょうね。