現在私たちは熊に恐れを感じ、護身のために殺害することもある。ではなぜ、くまのプーさんなどといったマスコットキャラクターに人気があるのだろう。呪術性を失い、人間と熊との関係が稀薄になった現在、キャラクターとしての熊を通して、再び熊との関係を築きあげようとしているのだろうか。 / 熊から得られる効能の消費者から、これを愛でる消費者へどのように変わったのか分からず、もやもやしています。
講義でお話ししたとおり、実際の熊と遭遇する機会が減少する一方で、もともと熊に対する言説のなかにあった親近性ばかりが肥大し、「かわいい」要素が情報として支配的になってしまっているからでしょう。いいかえると、自然を征服したという幻想に無自覚に陶酔している、ということかもしれません。なお、野生に近い場所で生きていたかつての人間たちにとって、動物は自然のなかにある様々なサインを知るために重要な存在でした。動物をどれだけ観察できるか、そこからどれだけの情報を得ることができるかが、人間の生存において極めて大切だったのです。その意味で、現在でも人間が子供に動物のぬいぐるみを与えたり、ペットを与えたりするのは、そうした文化発生の根本に起因する行為なのではないかとみる見解もあります。