デュルケームのところで、「神とは社会のことだ」といった論が出て来ましたが、神学の授業で「神概念がこの世から消えることはなく、消えたとしたら人間は人間として存在できない」との話が出て来ました。私は神というものにあまり実感が湧かないのですが、神の存在は不可欠なのでしょうか。

カミという名称で呼ぶかどうかは別として、何らかの超越的な概念は、確かになくならないかもしれません。というのは、人間がこの世界で生存してゆくために、自己を正当化する、あるいは防衛する材料・手段としてそれが必要になってくるからです。とくに、例えば東日本大震災のような、個人の力では回避できない現象に遭遇し、決定的な精神的外傷を負ってしまった場合、それをどのように治癒してゆくか。外傷の生々しい深刻な状態から脱するためには、一度自分に負荷されている責任や後悔をすべてゼロに戻せるような、そうした回路が必要になってくることもあります。