文化圏論に関して、自然環境と普遍性との関連で照葉樹林文化論が掲げられていましたが、木が気候や土地を示すのに適しているからでしょうか。

とにかく、文化が構築されるうえで、植生が衣食住全般の基盤になるからですね。衣服はもともと樹木・草木の繊維から作られますし、食事においては根菜・野菜・木の実など、やはりその植生に基づく食べ物が提供されます。住空間が、樹木をその建材として用いていることはいうまでもありません。植生を同じくするということは、これらの基本的材料を共有するということですので、文化の成り立ちを考えるうえでは非常に大きな意味を持ちます。また、心性的・感性的な世界においても、その源泉のひとつが主体の生育する環境、周囲を取り巻く自然物やその景観であることを考えれば、神話の制作にも大きな意味を持つといえるでしょう。