離れた土地で類似する神話・伝承がどのように発生するのかということで、同時多発的に起きた現象によって作られる神話・伝承もあるのでしょうか?例えば、スマトラ沖で自身が生じた場合、津波の被害は日本まで及びます。そこで日本とスマトラで、突然同じ話が生まれることなどはありますか?

広範囲に及ぶ同一の自然現象が生じた場合、それに関わる神話が多くの地域で語られ出すことはあります。日蝕を表象した太陽の消失する話、皆既日蝕に基づく有翼日輪の普及などはその一例でしょう。また、洪水による世界の滅亡と人類の再生を描いた洪水神話も、世界の広い地域に分布しています。かつてはグラハム・ハンコックのように、地球上を一時に襲った大洪水に由来するものだとしたトンデモ学説もありましたが、歴史上の一点に還元・集約するという見方は安易すぎるように感じます。また、同一現象を捉えた神話も、地域の文脈に沿って異なる表象に育ってゆくことが普通で、普遍性よりもその差異を大切に捉えてゆくのが現在の神話研究の醍醐味と思います。