フロイトの無意識論と神話との繋がりについてなのですが、オイディプスにおける父親殺しや母親への愛情などが、欲動としての無意識の発現なのでしょうか。このような神話によって、人は無意識的な欲求によってなされたことがタブーなのかどうか理解し、子孫にも継承されてゆくということでしょうか?

異性の親への一体化欲求や同性の親への愛憎も無意識の欲動の発現ですが、この経験と克服の過程で、その性愛を抑制しようとする心理機制や罪悪感が醸成され、道徳感・倫理感の中核を形作ってゆくと考えられています。その過程においては種々の葛藤が生じ、場合によっては適切な克服が達成されずに、父や母に対する強烈な過度な愛憎が芽生えたり、道徳感・倫理感が充分に形成されず、いわゆる神経症状態を発症することもあります。神話はそうした葛藤が物語り化されたものですが、その文脈や主人公の置かれた情況を自分に当てはめて理解することで、自らを客観視し心理状態を整理することができ、神経症の治療にも効果があるものとみられています。その意味で神話は、人生の個々の局面に応じた自らの〈生〉の物語り化を助け、その順当な展開を促すものといえるかもしれません。