フロイトとユングの区別がいまひとつはっきりしません。対照的と捉えていいのでしょうか。

細かな相違点を挙げればきりがないでしょうが、最も対照的な点は、やはりユングが無意識を集合的に捉えているのに対し、フロイトはあくまで個人心理の成長過程において把握していることでしょう。ユング集合的無意識下にある〈元型〉が人間の心理を規定付けていると考え、患者の夢や幻覚の世界に神話的モチーフが現れるのはそのためであるとの、構造主義に近い考えを提示します。一方のフロイトにとって、神話は個人意識の反映であり、あるいは原初の個人的葛藤が起こした歴史的事件を物語り化したものです。そもそもベクトル自体が対照的ともいえますが、しかしそうした神話を通じて人間は成長期の自らを客観化し、試練や困難を克服できるとしている点は共通していると考えられるでしょう。