シャーマンとは、成巫譚にあるように、あらゆる困難を乗り越えなければなれない存在なのでしょうか。

すべてがそうとはいいきれませんが、困難を乗り越えることで世界との分断を回復する、精霊との交通を可能にする、あらゆる人の苦しみや痛みに共感する、そのような存在になったものとして尊敬されるわけです。例えば巫病の症状などは、本当に想像を絶します。それらを受けとめるルートのある前近代社会ならば、まだ救済への道ははっきりしているのかもしれませんが、現代社会において巫病を発現しシャーマンへの道を選び取ってゆくひとの人生は、本当に苛酷で家族もその苦痛を共有せざるをえません。先日亡くなった民俗学者谷川健一さんの著作に、現代社会におけるシャーマンの誕生を、実話をもとに物語的に叙述した『神に追われて』という作品があります。ぜひ参考にしてみてください。