世界史で古代史を勉強していると、神事を司る人間が権力を掌握する事例が多くあります。日本ではそのようなことはなかったのでしょうか。古墳に埋葬されている首長は、そもそもどのように権力を掌握したのでしょうか。

もちろん、日本でもそのような事例はあります。少なくとも古墳時代までは祭政一致の状態ですので、古墳に葬られている権力者は、政治的首長であると同時に宗教的能力を認められた者であり、いいかえると、神的な力がなければ首長や王として君臨することができないと考えられていたわけです。それゆえに、石室のなかには武器や宝器とともに祭器が副葬されているのです。首長の配下にも専門的な呪術、卜占、祭祀などを司る職能者が存在したと思われますが、それを全体的に統括する最高位のシャーマンが王であったといえるでしょう。このような性質は天皇にも受け継がれており、中臣や忌部といった祭祀氏族を擁しつつも、その上に立って国家を代表する司祭であったのはあくまで天皇でした。現在でも、天皇神道最高神職です。