横穴式石室が普及し、追葬によって遺体をみる機会が増えたことで死者に対する意識が変わったと仰いましたが、具体的にはどのように変わったのでしょう。死者を恐れなくなったと言うことでしょうか? / 実際の追葬は権力者ではなく、従者などが行っていたのではないでしょうか。

古墳の祭儀は、それが被葬者をカミとするものであれ、あるいは首長霊を継承するためのものであれ、現首長にとって最重要の「通過儀礼」ですので、必ず現首長が参加、もしくは主主催する形で行われたと考えられます。追葬の場合は、すでに成立しつつあった土師氏のような存在が代行したことも考えられますが、まったく関与をしなかったということはないでしょう。遺体をみる機会は死者への恐れ、あるいは単純な嫌悪感を強めたでしょうが、自分をその死者に引き替えて考え、死者の行く世界、死んだ後の世界を構想するきっかけになったのではないかと思われます。自分は死後にどうなるのか、どこにゆくのかという発想が、石室内を死者の住居とする発想からさらに飛躍し、それを出入口とする広大な黄泉国へと繋がっていったのではないでしょうか。