トーテムの話に関心を持ちました。動物を族霊とする部族のなかには、その動物との婚姻譚も同時に存在するのでしょうか。また、トーテムで用いられる動物、用いられない動物など、動物のなかでの神聖視/非神聖視の多寡はありますか。

確かに、虎トーテムには虎との異類婚姻譚、熊トーテムには熊との異類婚姻譚が多く残っています。どちらが男でどちらが女か、という差異は父系/母系/双系のなかで変化しますが、概ね虎にしても熊にしても、婚姻を結ぶときは人間の姿になっている点が注意されます。すなわち、獣の姿はあくまで毛皮を着込んだものであり、それを脱ぎ去って現れる精霊としての本体は人間の姿をしている。これはヒト中心主義というより、生物としてのヒトの素朴な主観、他者表象の限界なのだといえるかもしれません。しかし、トーテム動物がすべて部族の祖先であるわけではなく、一族のもの、あるいは特別な関係にあるものと説明される場合もあります。アジアには熊、虎、狼といった生態系の上位に位置するものがトーテムとなる場合が多いですが、アメリカなどでは、鳥やビーバーなどのトーテムもあります。レヴィ=ストロースによれば差異のモデルとして使用されているに過ぎないので、やはり各地域の文脈に沿った分析、内的分析/外的分析を併用する必要がありますね。