水の神聖視について、その鏡面的性格が採り上げられることはないのでしょうか。鏡や水が映し出す世界をもうひとつの別の世界と考え、鏡面や水面を境界とみるような考え方があってもおかしくないと思うのですが。

面白いですね。確かに鏡に映った世界を他界、もしくは他界への入口とみる発想は、西洋の民話・伝説やファンタジーなどでよく見受けられます。しかし、中国や日本では、あまり明確に対象化されないのも確かです。『抱朴子』跋渉篇では、山中の精霊や怪物と対する際に鏡を用い、真実の姿を映すことで対応する呪術がみられます。やはり、鏡は辟邪の呪物であって、鏡面においてはタブーの度合いが高かったのかもしれません。