世界各地で、下半身が蛇だったり馬だったりする絵が描かれるのはなぜなのでしょう。その動物のイメージに合わせて、何らかの文化的・歴史的背景が表れているのでしょうか。

半人半獣の想像力は、やはり人間と動物の能力を併せ持つ存在への憧憬に由来するものでしょう。それらはもともと神的なものでしょうが、ヒト至上主義が強くなってくると、逆に怪物へと貶められてしまいます。ギリシア神話のメドゥーサなどがよく例示されますが、かの女性は髪の毛が蛇として形象されます。蛇は水神であり、豊饒のシンボルですから、メドゥーサも本来は豊饒の女神だったのでしょう。しかし、ギリシア地域の開発が進み、森林が切り開かれ衰滅してゆく状態になると、そうした存在は文明に対する対立項に置かれてしまう。キリスト教が広まるとこの傾向はさらに強まり、アニミズムやシャーマズムの伝統に根ざした精霊や神々が、次々と怪物的存在へ貶められてゆくのです。