初歩的なところに戻ってしまうのですが、なぜ皇国史観を作る必要があったのか分からなくなってしまいました。大まかな流れを整理していただけるとありがたいです。

冒頭にお話ししたように、国民国家はその運営のため、国民を結集させる何らかの物語を必要とします。その典型的なものが歴史で、いわゆるナショナル・ヒストリーということになります(アメリカのように現実に歴史の浅い国では、建国の理想・精神などがそうした物語として機能します)。ナショナル・ヒストリーはその目的上、国家のあり方を正当化し、国民を統合する性格を強く持ちます。列島の各地が封建的に分断されていた江戸時代から、明治維新により近代的統一国家を目指そうとした日本にとって、それは不可欠な要素と思われたに違いありません。そこで統合の象徴として見出されたのが天皇であり、その君主たる起源を説明する神話であったわけです。内容的には極めて古代的といえますが、皇国史観も典型的なナショナル・ヒストリー、もしくはナショナル・ヒストリーを構築する視角であるといえます。