神道と、宗教として体系化される以前の神祇信仰とは、具体的に何が違うのでしょうか?

神祇信仰は、各地域によって特色ある自然信仰、氏族の祖先信仰、外国から輸入され定着した新しい神々などが、雑多に共生しながら崇拝されている信仰形態でした。古代国家としては、それらの崇拝の形式、祭祀の形式を統一しようとしましたが、現実には大きな振幅と多様性があったわけです。もちろん、そこで説かれるような道徳・倫理にも体系性、統一性はなく、一般的かつ多様な事柄が述べ伝えられていたにすぎません。宗教にとって最も必要なものはいうまでもなく「教義」、及びそれを記した「聖典(経典)」ですが(これらがなければ宗教としての存在意義もありません)、神祇信仰にはそれがなかったわけです。しかし、仏教や儒教、中国のさまざまな思想に触れることによって、次第に神祇信仰においても教義が説かれるようになってゆきます。それらは、神祇信仰に根ざした極めて曖昧な倫理(自然との一体性など)を核としつつ、仏教や儒教の論理を借用し説明付けたものでした。こうして主に仏教の側から、そして仏教と接触した主要な神社のなかから、神仏習合を基礎として作り出されてゆくのが「神道」といえるでしょう。