すなわち、国体にしても皇国史観にしても、もともとはヤマト王権の「民族」主義的な神話に端を発しているので、せいぜい日本列島における大王=天皇支配の正当性を語るものでしかない。しかし帝国主義のものと他国の領土を侵犯し始めたとき、それを「侵略」とは別の表現で説明する必要に迫られたのです。それは、列島に自生する国体概念が、列島に自生するがゆえに機能しえたこと、それゆえに多くの「日本人」の共通理解となりえたことと深い関係があります。いいかえれば、天皇が列島以外の国々も支配するようになると、そもそもの列島に自生した支配の正当性自体が疑われてしまうのです。