捏造事件の話のとき、「東北は関東の植民地」という話がありましたが、古代の蝦夷やアイヌの件なら分かりますが、現代ではどのような点で植民地といわれているのでしょう。

東日本大震災後にいわれたのは、やはり原子力発電所の問題です。現在日本列島に設置されているプラントの4〜5割が東北地方に存在し、地域別の割合ではトップになっています。原子力発電所の設置に関しては、もちろん多額の補助金や雇用が発生するわけですが、そのぶん事故などのリスクも大きい。震災時のメルトダウンを除いても、レベル3以下の事故は、1978年の福島第一原発3号機臨界事故以来、公表されているだけでも15以上を数えます。周辺に与える環境被害、健康被害は甚大なものです。東北の原発プラントの半分ほどは東京電力が経営していましたので、「植民地」問題が叫ばれたわけです。また、高度経済成長期に安価な労働力でこれを支えたのは、東北をはじめとする中卒の青年たちによる集団就職でした。幕末の東北戦争以降、首都圏への食料・労働力・エネルギー供給の要となってきたのは東北地方であり、首都圏の人々はそれに依存してきた、その犠牲のうえに安住な暮らしを築いてきた、ということもできるのです。