植物が人間の生活に大きな影響を持っているということには賛同できました。しかし、ではなぜヨーロッパの石の文化と日本などの木の文化といった差が生まれるのでしょうか。ドイツなどにも森林地帯はあったと思うのですが…。

古ヨーロッパなどでも、木の文化がまったく存在しなかったわけではありません。ガリアやゲルマンの基層信仰であるケルトドルイド教では、聖なるオークに供犠を行う樹木信仰が発達していました。ギリシアの古典文化でも、木材が大量に利用されていたことが明らかになっています。しかし、中近東から地中海沿岸にかけての古代文化では、樹木を大量に伐採して涸渇させてゆき、再生のための努力をほとんどしてきませんでした。中近東一帯に自生していたレバノン杉は切り尽くされ、ギリシャの島々からは土砂の流出が止まらず環境悪化の進んだことが、当時の記録から読みとれます。気候の問題もあり低植生となった地中海沿岸では石の文化が発展し、次第にガリア、ゲルマン地域にも広がってゆくわけです。ヨーロッパでも、農村地域の一般庶民の家々などは、必ずしも石の文化として規定しうる作りになっていません。注意が必要です。