縄文時代の信仰の話を聞き、レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』を思い出した。古代日本についても同じような研究があれば紹介してほしい。

構造主義については、本来「日常生活における社会的機能を保持している」神話が多く採集されていなければ分析作業が行えないため、古代神話へ適用するのは難しいという方法論的制約があります。レヴィ=ストロース自身は『構造人類学』のなかでオイディプス神話の構造分析をしてみせていますが、どうしても恣意的になり成功しているとはいえません。よって日本の神話研究においては、通常の文献学的方法、歴史地理学的方法が盛んで、あとはデュメジル的な比較神話学や、ユングの元型論に依拠したものがほとんどです。ただし近年では、エリアーデシャーマニズム研究を読みなおすなかで、神話をシャーマンの宗教的実践、もしくはライフ・ヒストリーである成巫譚として分析し直そうという試みが多く行われています。なお、管見の限りで日本神話に構造分析を施したものとしては、嶋田義仁『稲作文化の世界観―『古事記』神代神話を読む』(平凡社、1998年)があり、日本神話の研究史としては、平藤喜久子『神話学と日本の神々』(弘文堂、2004年)が参考になります。なおなお、レヴィ=ストロース自身が日本神話・文化について考察した『月の裏側』(中央公論新社、2014年)も刊行されています。