先生がされた調査で、お化け以外に、若い人が怖がっているものは何だと結果が出ましたか?

やはり、いちばん怖がっているのは、自分と同じ立場の学生でしょうね。あるいは、自分が所属している社会といってもいい。そのなかで孤立すること、疎外されること、自分の居場所が確保できないことが、最も怖ろしい。それは現代の若者たちにとって、社会的な意味での「死」を意味するのでしょう。その点では、死を恐れ再生を願った縄文人と同じ、といえるかもしれませんね。前近代の人たちは、死の想像力と結びつく場所、すなわちいかなる危険が待っているか推測することのできないような場所に、幽霊や妖怪が現れるものと考えていました。非日常との出会いがあるところ、すなわち外でいえば衢(交差点)、橋、村境、家でいえば門、玄関、軒先、厠などで、民俗学的には〈境界〉といいます。現在でもこうした〈境界〉の痕跡は残されており、やはり橋や交差点付近に集中して怪談が語られています。ところで、現代の新しい〈境界〉として注目されるのはパソコンやスマートフォンです。これらの端末は広大なネット世界と繋がっているので、やはり使用者にとっては外部と接続する〈境界〉なのです。しかもその外部は、現実世界に勝るとも劣らない危険に満ちており、実際にネットを通じて犯罪に巻き込まれる事例も多くある。ネットや携帯に依存しつつ、それを恐怖する。こうした心性は、『リング』に連なるジャパン・ホラーのなかに明確に表現されていますね。