牛乳は当時から飲まれていたのですか。 / 典薬寮では乳戸から牛乳を得ていたとのことですが、どのように運搬されたのでしょうか。生乳では難しいと思うのですが、何らかの加工を施されたのでしょうか。

確かに腐敗の心配はありますが、薬園と同様宮廷の至近に設置されていたのでしょう。宮廷や寺院でも、乳牛を飼育していた記録は残っています(宮中にあった典薬寮別所乳牛院など)。当時の貴族の食生活で乳製品の占める位置は小さくなく、食用・薬用として珍重されていました。生乳は主に薬用で、病後の滋養、体力回復、あるいは健康維持のために飲まれています。加工食品としては酪・蘇・醍醐などがあります。酪はヨーグルト的なもの(酸乳?)、蘇は酸乳を煮詰めて乾燥させたものです。薬用のほか、嗜好品、神仏への供えものとしても尊ばれました。醍醐は蘇を精製したもので、日本では生産されず、中国からの輸入に頼っていたようです。