当時、病以外にも、例えば安全祈願などの目的で経典を用いることはあったのでしょうか。

未だ仏教文化が充分に浸透し大衆化していませんので、日常生活レベルで目的の細分化した経典が使用されるには至っていません。しかし、いわゆる念持仏の類は存在したようですので、陀羅尼等の簡単な経典を読誦していたことはあったでしょう。また、富裕な貴族の邸宅には、その護持を専門とする家僧も存在していました。彼らがいわゆる祖先供養とともに、より現世利益的な、病を含めた求福除祭のために活動していたことは間違いないと思います。