黄泉国神話で、最後になぜ男神のイザナキに生殖が結び付けられ、逆に女神のイザナミに死が結び付けられるのでしょうか。

実はこの神話には、女性を穢れとみて排除してゆく、非常に家父長制的なニュアンスが認められます。授業で紹介した部分のあとに、イザナキは黄泉国の穢れを落とすために禊ぎを行いますが、その折に誕生したのがアマテラス・ツクヨミ・スサノヲの3貴神だという展開になるのです。アマテラスはもちろん皇祖神ですが、これが男女和合によって生まれてくるのではなく、男のみから誕生するというのがやや作為的なところです。もともとの神話は、こうした展開にはなっていなかった可能性があります。アマテラス自身は女神ですから矛盾がありますが、男性原理に基づく清浄な神格が構想されたため、黄泉国神話が利用されたものと考えられます。