古代の説話などで、「有るものが無くなる」ことを「食」という行動で譬喩することが多いように思いますが、やはり人間の生活のなかで「食」というものに重点が置かれているのでしょうか。

食べるということが、生命維持の根幹に属する、より宇宙的な行為としてみられていたことは確かですね。例えば、日本の王権においては、土地から貢納される産物を食べることが支配の表明となり、支配領域を意味する「食す国」という言葉が生まれる。〈食唐鬼木簡〉の呪言に出る「食」の問題は、よりプリミティヴな、自然の観察に基づいています。これについては、また詳しく授業で話します。