『千金方』を補完したという『千金翼方』は、構成のうちに神仙思想が強くみられ、医書としての本来の方向性から外れている気がしました。

道教の起源をおおまかにいうと、老荘思想と神仙思想になります。神仙思想は、食事の節制や丹薬の精製によって不老長寿、不老不死を目指しますが、そのベクトルが医学研究、薬学=本草学研究へ繋がってゆくわけです。よって、中国の古代・中世には、医師・薬学研究者でありながら同時に道士、という人々が大勢輩出しました。葛洪しかり、陶弘景しかりです。ゆえに、医術と道教、呪術などとは不可分であり、後者は医術の重要な一要素を構成していたとみるべきです。