『続漢書』礼儀志中/大儺の文言には、相手を指す言葉として「女」=汝が使用されていましたが、下位のものに使う代名詞と思います。なぜ使用されたのでしょうか?

実はこの問題は、以前に論文で書いたことがあります(「神を〈汝〉と呼ぶこと」、倉田実編『王朝人の婚姻と信仰』森話社、2010年)。中国道教などでは、神霊を名前によってコントロールし使役しますので、「汝」という、目下の相手に用いる代名詞で呼びかけるのです。実は、日本の神祇信仰で用いられる祝詞にも、この「汝」を神に対して使用しているものがあります。ナムジはもともと目下の相手にのみ用いる言葉ではなかったのですが、祝詞や祭文を文章で構成する際に中国のそれを参照したため、逆に使役的なイメージが発生してゆくようです。