どのような過程を経て訛のある言葉ができたのでしょうか。 / 方言とは、いつ、そもそも何のために生まれたのでしょうか。

標準語と方言とを対立的に捉えているのかもしれませんが、地域環境に根ざした言葉が発生するというのは自然なことです。地球上で、いくつもの言語体系があるのと同じです。むしろ、日本語、英語、フランス語と、近代国家の枠組みで言葉を区切って、均質化して考えてしまう方がおかしい。どの言語にも、広域で使用されるものであれば、地域的多様性はあるのです。中国など、同じ漢民族間でも、北と南ではまったく言葉が通じない場合もあります。列島では、古代の段階から、東国の訛のあったことが、万葉集の音韻研究から判明しています。日常をよく考えてみれば、同じ地域でも、年齢層によって使う言葉、イントネーション、話し方なども違うでしょう。家々で用いられる固有の言葉、自分と友だちだけしか使わない言葉もあるはずです。言葉は、個々の生活のなかで育まれ、変化してゆくもの。その典型が方言であって、標準語を「美」といい、強制しようとするのは、文化・伝統の否定以外の何ものでもありません。