『日本書紀』など藤原氏が編纂させた史書には多くの改竄がみられると聞きますが、なぜそのようなことを行う必要があったのでしょうか。

例えば、高校の日本史教科書でもわずかながら扱われる崇仏論争。一般には、百済からの仏教伝来をめぐって、その崇拝の可否を蘇我氏物部氏が争い、最終的に前者が勝利して奉仏へ向かうとのストーリーですが、『書紀』が漢籍や仏典を援用して築き上げた、ほぼ架空の物語です。これは、廃仏を経て仏法興隆に結びつくという流れが重要で、中国の史書・仏典においては、隋唐帝国仏教文化なども同じような文脈で語られるのです。日本は、自国が中国と同じような歴史を有し、同じような繁栄をたどってゆくことを、歴史叙述を通じて示したものと考えられます。