戦後の日本は、愛国心があまりいいものとはされていない気がします。それは、戦中の行き過ぎた愛国教育が原因でしょう。しかし、愛国心を持つことは本来当たり前のことで、国風文化について広く知ってもらうことで、私たち日本人に再び国への誇りを持ってほしかったのではないでしょうか。

これまでにも事例を挙げてお話をしてきましたが、愛国心を持つことは「当たり前のこと」ではありません。それは、国民国家という一時的な統治システムが、自己を維持するために国民を訓育してゆこうとする過程で作られてゆくものに過ぎません。前近代にあっては、郷土愛を持つひとはそれなりにいたでしょうが、統一国家としての日本に対する「愛国心」を抱く人間など、極めて稀でした。それを、これまで数回かけてお話ししてきたように、近代国家が長期間かけて現在のような状態に変質せてきたわけです。世界的にみても、国民国家に対する帰属意識の薄い少数民族などは、当然のことながら愛国心を持っていません。日本の国に生まれたら日本を愛さなければいけない、それは当然のことという発想は、そうでないなら他国へ行けという論理に繋がりかねず、極めて危険なものだと思います。