樹木を神として崇めていた日本で、人間が樹木から出てきたと考えていたのは、人間を神と同義のものとみていたということでしょうか。

神話で語られるたいていの人類の起源は、神の子、もしくは似姿を持つものといった性格があり、それが尊厳の根拠のように位置づけられます。すでに授業でお話ししたように、狩猟採集社会のアニミズムにおいては、精霊は人間と同じ姿のものが、クマやトラなどの毛皮を纏って動物として振る舞っていると考えられています。『旧約聖書』でも、神は自分たちの姿を象って人間を作ったことになっていますが、造物主を持たないアニミズムの世界では、神と人間の距離はより近いものになっているといえるでしょう。ただし、神や精霊は生命の精華たる存在であって、肉体を持つ人間はそれよりも一段劣るものとみられていたようです。