大理・南詔仏教に現れた梵僧と四川省の梵僧像との関連性が指摘されていましたが、同じく地域的に近いチベット仏教には、同様の影響が現れなかったのでしょうか。

チベット仏教も、南詔の仏教とほぼ同じような時期に形成されてゆきます。吐蕃は西域やインドにも近しいので、直接インドから高僧が招かれ、大蔵経の翻訳なども進められて仏教文化が栄えました。現在でもラマ教という名前が残り、ダライ=ラマなどは有名ですが、サンガという教団をしっかり組織し、師弟関係のなかで研鑽が行われてゆくあり方は、インド仏教の精髄をよく伝えているということができるでしょう。また同時に、在来宗教であるボン教の影響も多分に受けており、神々の種類や神霊世界の表現、その神秘性に特徴がみられます。大理よりもチベットに近いナシ族のトンパ教などは、このボン教チベット仏教の影響を色濃く受けています。