キリスト教と融合した仏教の説話に何かありますか?

児嶋先生の論文を読んでください(笑)。それはそれとして、例えば仏教的要素、キリスト教的要素の双方を吸収していった伝承に、東アジアに広汎に伝わる都邑水没譚があります。一昨年の特講で詳しく扱ったのですが、中国の後漢時代に初見する、善人が都市の陥没の予兆を神霊から聞く→毎朝その予兆を確認しに城門へ行く→善人の動きを訝しく思った守衛が事情を聞く→守衛は善人を騙そうと予兆を偽装する→逃げ出す善人を守衛が笑いものにする→本当に都市が陥没し、善人以外みな死んでしまう、という形式の伝承です。問題は陥没時の洪水の描写で、江南地域で発展した中国の伝承では、亀で洪水地域を脱出するという、『六度集経』という経典に出てくるモチーフが追加されます。これは日本列島に入ってきて、長崎地域の隠れキリシタンの神話として再構成され、ノアの洪水と結びつけられてゆくのです。