少数民族のクランと、動物の生息域は一致するのでしょうか。民族の移動により、クランの対象動物がみられなくなっても?

これは本当に重要な問題ですが、例えば、少数民族のトーテムのうちで最も広汎に分布しているのは、虎トーテムなのです。これは、東南山地を中心に棲息してたアモイトラ(華南虎)のためで、ほぼ、民族集団の分布範囲、生活領域と一致しています。しかしこのアモイトラは、近現代の撲滅運動を通じ、ほぼ全滅して姿を消していました。しかし、未だにトーテム信仰としては維持されているのです。例えば未だにオオカミの勢力が強いモンゴルのように、その威力を実感している情況では問題ないのでしょうが、それがなくなったとき信仰はどう維持されるのか。伝承の力だけで持続するのか。でも考えてみると、例えば漢民族の龍トーテムは、その姿が実在しなくとも何百年にわたって生き残っているわけです。風雨や雷などを龍の実態として捉えているからかも分かりませんが、詳しい調査が必要でしょう。